IKa
この度はお忙しい中、楽曲制作を引き受けてくださってありがとうございます。
古代
いえいえ。こちらこそIKaさんが昔から私の音楽を聴いて下さっているって風の噂でボクの耳に届いておりまして。
じゃあそれには応えてあげたい、応えられれば、と思いまして。
よし、頑張ろう!って感じでお引き受けさせていただきました。
IKa
ありがとうございます。
いまのお言葉、すごく胸に突き刺さりました。
ああ、マンガ描き続けてきてよかった……!
古代
大変面白かったです。失礼ながらお仕事をいただいて、初めて作品を読まさせていただいたんですが、キャラの特徴付けがすごくうまい。(笑)
ああ、わかっている方が書いているんだなぁ、と。
それに間がすごく良くて結構ゲラゲラ笑いながら読んじゃいました。
本当に面白い。
IKa
うわー。すごく恐縮です・・・(笑)
そしてとっても嬉しいです。ありがとうございます。
古代
楽曲を発注いただいた際、今、とっかかっている別の仕事がありまして、楽曲の納期がギリギリになってしまう、なんてお話をさせていただいていたんです。ですがホビレコードさんからサンプル曲とIKaさんの歌詞が送られてきまして。サンプル曲を聴きながら歌詞をみた瞬間、なんかパッと浮かんできたんです。こんな感じでいけそうだな、っていう。
IKa
すごい!
古代
IKaさんの歌詞が非常にわかりやすくて明快で、読んでいたらメロディがふっと自然に浮かんできたんです。「あ、これはもうそのまま」って感じで、すぐ楽譜にババッっと書いて。
IKa
楽譜にいきなり!?
古代
そうですね。パソコン(シーケンサー)立ち上げていると逃げちゃうんで。すぐババッっと書いて。
IKa
ほえーー。
古代
頭の中にもう8小節ぐらいいきなりできるんですよ。
そのコードとメロをバッと書くんです。
で、それからパソコンを立ち上げて。さて続きどうしようか、と(笑)
IKa
なるほど(笑)
古代
普通はそこで半日ぐらい寝かしたりとかするんですけれども、この曲の場合はなんかどんどん思いついて一気に。
だから原型は多分一時間ぐらいで出来てしまったと思います。
IKa
1時間で……。それは古代さんの場合、割と早いほうなんですか?
古代
早いですね。歌詞が最初にあった、っていうのが大きかったと思います。
実は歌詞先行で曲を発注いただくっていうのは、私初めてなんですね。
IKa
そうなんですか?
古代
ええ。いつもメロ先行なんです。だから歌詞先行で曲を作るのが、こんなにやり易いんだなぁって発見しました。「歌詞先行はいいぞ!」と。
これから歌モノをお引き受けするとき、歌詞先行で御願いしようかな、と思ったぐらい。(笑)
IKa
歌詞先行だとやりづらいって、古代さんに言われたらどうしよう?って
こちらは思ってたんです。だからそう言っていただいてホッとしました。
よかった。(笑)
IKa
一番最初に僕が作詞をさせていただいたのが、ドラマCD第一弾に収録されている「アフリカ」の歌詞で、これで都合3曲目の作詞なんですけれども。僕が大ファンの漫画家の竹本泉先生がご自身の作品をドラマCD化したりゲーム化されたりする際、割と作詞をよくなさっていたんですね。その詩がとっても好きで。だからあんな感じの作詞が出来ないかな、と思っていたんです。
なんていうか詞が、物語というよりは割と抽象的な言葉を並べた詩がいいなぁ、って。だから意味がわからない、って言われたら、本当にごめんなさいってしか言えないんですけれども。
古代
自分はゲーマーなので、詞にすんなり入れましたよ。
結構マニアックな歌詞も非常に理解できて、自然とスッと。
例えば詩の中に『ロケラン』っていうフレーズがあるんですけれども、
普通は「ロケランってなんぞ??」って感じだと思うんですが、自分は違和感なくすぐ意味がわかりましたし。(笑)
本当にすごくわかりやすかったですね。
IKa
ああ、古代さんならでは、です。本当によかった・・・(笑)
古代
素晴らしかったです。なんていうか独特じゃないですか、はこまるさんの声って。でもそういう面を持ちつつも、下田さんがしっとりと歌われた感じがすごくハマっていたんですね。だからその中間みたいな感じを御願いしたんですけれども、それがすごく良い感じにハマって。
仕上がった楽曲をプレイバックで聴いて、あ、上手い感じにいったんじゃないのかなこれは? と。
IKa
本当に素敵でした。僕も、はこまるさんがああいうキャラクターですし、キャラソンですから、はこまるさんの声でゆくのか、それともどうするのか、僕の中でもわからないところがあって。同じ事をスタジオにいた皆様も思われていたのかな?っていう感じで、僕が言う前に周りの皆様が色々試してくださって、それに下田さんがバッチリ応えてくださって。
古代
ええ、本当に。正直、キャラソンというのは最初は結果が非常に読みにくい感じなんですけれども、今回は終わってみれば想像以上というか、ああこう来たか、良かった! っていう感じですね。ええ。本当に良かった。
IKa
「2、3歳あげてください」というこちらの指示に対して、ばっちりピントをあわせることができるって、すごいなぁ、と。やっぱり声優さんってすごいなぁ、と思いましたね。〈苦笑)
古代
下田さん、すごかったですね。
IKa
キャラソンとしても歌としてもすごくいいものが出来ていくのが目の前で繰り広げられていて、幸せな空間でした。
古代
現在はもう、私がイースとか作曲した四半世紀前とは曲の作り方も違うんで、これが定番というのは年代によって違うんですけれども。(笑)
最近はそうですね、生楽器を使ってのバンドとか、オーケストラの仕事が多かったので、基本的にアウトラインをばばっと書いて、すぐ譜面にして、って感じなんですよ。
IKa
今回の『Hello〜へいろ−〜』も生楽器による演奏ですね。
古代
ええ。打ち込みの場合、一生懸命こう生楽器っぽく演奏を作り込んだりするわけなんですが、そういうのって一生懸命努力する割には生楽器には全然勝てない〈苦笑)
IKa
ああ…(苦笑)
古代
予算の話っていう現実的な話もあるわけなんですが、出来るだけ最近は本当に譜面だけでレッツゴーっていう感じでやっていて。
ただ、その中で昔培ったそういう打ち込みのテクニックっていうのもいかされつつ、みたいな。そこが現在の自分の味になっているかもしれませんね。
IKa
失礼な話なんですが、FM音源全盛期時代に活躍されてきた方は、五線譜というよりもMMLやシーケンサーで作曲するっていうイメージなんですが、古代さんは五線譜なんですね。
古代
曲スケッチなどはそうですね(苦笑) 僕はFM音源に触る前に、クラッシックの譜面を読んできたというバックボーンがあったので五線譜ですね。音楽はピアノから入ったんです。
あ、でも。道端でメロディーとか思いついた時は当然五線譜なんて手元にないわけですし、手帳に五線譜を書いている暇がないので、MML言語でババッとメモりますけれども〈苦笑)
IKa
MMLでメモ!? いわゆるcdefにl4o4とかっていうやつですよね?
古代
ええ。MML言語って結構便利なんですよ。少々特殊なんですが、五線譜が無くてもどこにでも書けますからね。〈笑)単旋律を書くにはとっても便利なんです。
IKa
それは古代さんならではのお話ですね〈笑)
あの質問なんですけれど・・・。「世界樹の迷宮2」のおまけCDに「ピアノスケッチ」っていうのがあったんですけれども。
古代
ありましたね
IKa
僕はあのCDを聴いて、古代さんが作曲する際、最初はピアノスケッチをされてからするもんだと思ったんですけれども、普段はピアノスケッチをされるんですか?
古代
あの時、たまたまそうしただけです。
IKa
え、そうなんですか。(驚)
古代
ええ。いつもピアノでスケッチしてから作曲なんてしないです。〈苦笑)あれは実験的な試みですね。
IKa
そ、そうだったんですか・・・
古代
なんでかっていうと、「世界樹1」の時はPC88時代な作り方をしたんですが、「世界樹2」の時はちょっとやり方を変えたかったんですよね。
作り方によって音楽性って変わるんですよ。直接PCに打ち込んでゆくやり方とか、ピアノを使ってスケッチをとる、あるいは、ギターでスケッチをとる、――みんなこれ違うタイプの音楽になるんですね。
だからその時に表現したいことにあわせてその方法を変えるんです。
IKa
なるほど!
古代
で、「世界樹2」の時はピアノ的な響きをゲームのBGMに入れたいというひとつの目標をたてたので、そのためにピアノスケッチをつくったんですね。
IKa
そういう意図だったんですか
古代
だから毎回ああいう風にやっているわけではないんですよ。残念ながら。
IKa
そうするとあのピアノスケッチは元々陽の目をみる予定がなかった音源、ということなんですか?
古代
……まぁ、そうなんですけど。多分、特典CDに収録されるだろうなぁっていう予感は。〈苦笑)
IKa
(苦笑)
古代
ボツ曲があればボツ曲で、っていう提案もあるんですが、ボツ曲はあまり出したくないなぁ、と。だから、もし特典CDをって提案された時、このピアノスケッチを出せれば……っていう計算をしてました。
IKa
ボツ曲はだしたくないですよね、確かに。
古代
で、まぁ実際特典CDの話になった時、そういうご提案がきて…してやったり、ハマってもらえたなぁ、と。ここだけの話です。(苦笑)
IKa
うわぁ、本当にここだけの話だ…〈苦笑)
IKa
古代さんが作曲を始めたのはいつ頃からなんですか?
古代
「ザナドゥシナリオ2」の前ぐらいですね。 きっかけは浪人一年目の夏休み。暇だったんですね。(苦笑) いままでは既存のビデオゲームの曲のコピーばかりをやっていたんですけど、ふとオリジナルをつくってみたいなって思ったんです。 自身、音楽はずーっとピアノとかバイオリンとか、中学の時はチェロをやっていたりとかしていたんですが、オリジナルの曲を作ったのはその時が本当に初めてなんです。
IKa
そうだったんですか・・・
古代
それで、オリジナル曲をつくってからしばらく置いておいたんですけども、 たまたま雑誌の広告でファルコムさんがサウンドスタッフを募集していて。じゃあ家近いし、これ持っていってみようかな、って。(苦笑)
IKa
ご近所だったんですね、ファルコム(苦笑)
古代
それで、曲を持っていったら、ファルコムの担当者さんのツボにハマっていただいたみたいで、 「これ、ザナドゥシナリオ2に入れてもいい?」っていうノリで採用されたっていう…。かなりショートカットしてお話してますけどそんな感じです。
IKa
何気にすごい話ですね、それ・・・。(笑) FM音源に出会ったのも、その時ですか?
古代
はい。PC-8801MK2SR に出会った時ですね。
発売当初、自分では持っていなくて。買った友達の家に遊びに行って、そこで打ち込んだりとかしていました。 名機ですけれども、雑誌にビデオゲームの曲をコピーして投稿していた当初、N88-BASICで曲を打ち込んでいたんです。 が、テンポがガタガタになったりとか、曲を鳴らす上でハンデが多すぎでしたね。
IKa
それでも投稿されていた古代さんのコピー曲は、本当に秀逸だったことを記憶しています。
古代
いえいえ。今聴くと音が外れているところがあるんですが・・・(苦笑)
ゲームのサントラCDって随分後に出るじゃないですか。
だからゲーセンにいって、レコーディングウォークマンで音楽を録音して、家でノイズ混じりの音源を聞きながら採譜するんですよ。
まわりでどかーんとかばーんとか、様々な筐体の音が鳴っている中で録音した音で耳コミ環境的には劣悪でしたけど。
そのハンデの中で曲を工夫しながらコピーをするのが楽しくて。(笑)
IKa
当時のゲーセンってどの筐体も音が大きめでしたしね。
懐かしいなぁ・・・。
古代
サウンドボード2の登場で、一気に使える音が豪華になるんですよね。
88SRの時は6音しか出なかったのが、+3音とリズムとPCMで11〜12音出るようになって。
IKa
衝撃的でした
古代
当時パソコンゲームの音楽よりもアーケードゲームの音楽のほうが豪華で、自分はどうしてもそれに追いつきたいって思いが強かったんです。
だからサウンドボード2がでることでそれが叶うって事ですぐ導入して・・・
IKa
なるほど
古代
ところが導入したものの、それを鳴らすには重すぎて話にならない、と。(苦笑) で、音源ドライバを自作したんです。
IKa
古代さんはプログラマーの面もあるんですよね。当時のファンの僕等からの認識として。
古代
当時はドライバから作らないと何も出来ない時代だったんですよね。
何も周りになかった時代でしたし。
IKa
ちなみにファルコムさんの音源ドライバは古代さん作なんですか?
古代
いえ、違います。それは知る人ぞ知る、通称「神たまドライバ」っていうモノが当時あって。 それだとBASICよりも正確に音が鳴らせるんですね。それで、私がファルコムさんで音楽をやる時に「どうしてもこのスペックのもので曲を作りたい」って御願いしたら、 当時、ファルコムのエースプログラマーであった木屋さんや橋本さんが、あっという間に似たようなものを作ってくれて。ああ、流石だなぁ、と。(笑)
IKa
うわー。あこがれのプログラマーの名前が出た!
古代
それでまぁファルコムさんのドライバとは別に、自分も同じようなものを作れるんじゃないだろうか? だったら作ってみよう、と。
で、作りました。
IKa
そこが凄いところですよね。(笑)
古代
まぁ、あの時は時間も山のようにあったので。(笑)
IKa
メガドライブの音源はどうでしたか?
古代
メガドライブも基本はサウンドボード2の音源と似ている構成なんですよね。
IKa
確かリズム音源がなくて・・・
古代
そうですね。リズム音源がなくて、あとPSGが少々ノイジーで独特の音がするんです。 ただ構成はほとんど一緒ということで、88の音楽ドライバ、私のつくった『ミューコム』っていう別名『ミュージックLALF』って言うドライバがあるんですけれども、 そのプログラムで吐きだしたバイナリをメガドライブでちゃんと走らせることができるように移植してもらって、お仕事をやりました。
IKa
ほえ〜テクノポリス(笑)
古代
懐かしいですね(笑)
IKa
そういえばテクノポリスソフトで発売された「お嬢様くらぶ」にも古代さんが曲を提供されていた様な・・・
古代
そうですね。あれもプログラマさんの家に遊びに行ったら「なんか作ってよ」って言われたのでその場でつくった曲なんですけれども(笑)
IKa
懐かしいなぁ・・・。よみがえるなぁ・・・(苦笑)
古代
最近だと長谷川明子さんに歌っていただいた日本一ソフトウェアさんのPSP用ソフト『クリミナル・ガールズ』のオープニングテーマ。 その次だと、先日発表されたレベル5さんのDS用ソフト『ミステリールーム』の音楽。
現段階で発表できるのはそのぐらいかな? 結構他にも色々あるんですが情報解禁できないものが多くて。すいません。
IKa
最近は今回の『Hello〜へいろー〜』みたいな、ボーカルのお仕事も引き受けられているんですね。
古代
単純に自分が歌モノが好きなんです。けれど仕事の性質上なかなか機会がないんですよね。 だから今回のお仕事も『歌モノをもっとやりたいなぁ』と思っていたタイミングに『Hello〜へいろー〜』のお話をいただいて。
IKa
グッドタイミングだったんですね。運がよかったなぁ…(笑)
古代
この『Hello〜へいろー』という曲は、本当に終始気持ちよく作れました。 なかなかプロジェクトによってとか、曲単位によってとか、うまくいく時といかない時ってあるんです。 私はよく打率とかに例えるんですが10曲つくっても自分の中で手応えがあるの2曲、3曲という・・・。 三割五分いいのが出せれば「ああこれはイケたな!」って思うんですけれども。
IKa
まさに野球ですね。
古代
その三割も、なかなか自分の中ではそうもいかないことも多く…。
そんな中で今回の『Hello〜へいろー〜』という曲は、かなりバットの真芯に当てることができたかな、という手応えを感じています。
それを是非是非聴いてみてください!
IKa
素敵コメント、ありがとうございます。本当に嬉しいです。
僕のほうも、本当にもうドラマCD3枚目を作っていただけるということで、それだけでもう胸がいっぱいで、とっても嬉しい事なんですけれども。 まさか古代さんに曲を提供していただいて、かつ、そんなにありがたい言葉までいただいてしまって。
ドラマCDを聴いて下さった方の皆さんの中には、僕と同様に、昔ゲームを沢山やっていて、古代さんの曲が大好きでCDを買い漁っていた、 という人が本当に沢山いるかと思います。そんな皆様に、是非このドラマCDを買っていただいて、是非『Hello〜へいろー〜』 を聴いていただけたらと思います。
古代
今回、とっても楽しかったので何かありましたら、また是非よろしくおねがいします。
IKa
こちらこそ本当にありがとうございました!
またよろしく御願いいたします。是非に。